事例紹介/CASE STUDY
02:育児休業取得社員の働き方

株式会社アシックス

アパレル・エクィップメント統括部 カテゴリー戦略部

所属部署と普段の仕事内容を
教えてください。

入社以来マーケティングひと筋で、現在はアパレル・エクィップメント統括部内のカテゴリーマーケティングチームという部署で管理職をしています。私たちのチームの業務は、アシックスのアパレルやアクセサリーといったアイテムの魅力をグローバル規模で知っていただくためのマーケティング戦略を練ること。さらにその戦略に沿ったマーケティングコンテンツの制作なども行っています。普段は世界各国のマーケティング担当者とのやり取りが多いため、言語・文化の違いや時差などにうまく対処しながら業務に取り組んでいます。

育休からの復職にあたって、
不安に感じていたことは何ですか?

夫婦ともに実家が遠方にあるため、両親や親戚のサポートが得られなかったことでしょうか。お互いに仕事が忙しい中、たとえば子どもが急に体調を崩した場合に夫と2人だけで対処できるのかは不安でした。

実際に仕事と子育てを
両立させていく中で、
特に苦労したことは何ですか?

私は子どもが生後10ヶ月のときに復職したのですが、そこから2歳になるまで1日に数回の授乳を続けていたんです。深夜や早朝にも授乳のタイミングがあったため、寝不足と疲労で体力的にとても辛かったのを覚えています。

それと関係して悩まされたのが、ホルモンの影響もあって脳が萎縮し、物忘れが増えたり頭がボーッとしてしまったりするいわゆる「マミーブレイン」という症状です。私の場合は集中力が持続せず、言葉も咄嗟に出にくくなって仕事に影響が出てしまう場面がありました。当時はいつも以上にメモを取ることを心がけ、ToDoリストも細かく念入りにチェックし、チームの仲間にも自分の状況を常に報告するようにして、業務中の「抜け・漏れ」が発生しないように努めていました。マミーブレインは病気ではないため治療法がないんです。自然と治まるのを待つしかないというもどかしい日々が復職後1年ほど続きました。

海外とのやり取りが
多いとのことですが、
仕事と子育てを両立する中で、
時差の問題には
どう対処しているのでしょうか?

海外のメンバーと仕事をする際には、自分の置かれている状況を正直にシェアすることが大事。「子どもが小さくて手がかかるんだ」といったことはもちろん、日本ではベビーシッターの活用がそれほど普及していないことなど、文化的なバックグラウンドの話もしています。どうしてもミーティングができない時間帯があればあらかじめ共有しますし、私の出席がマストなのかどうかもその都度見極めて、場合によっては自分以外のメンバーに託すこともあります。

仕事と子育ての両立を通じて
得られたものや気づきはありましたか?

嬉しいことにたくさんありました(笑)。まずは自分にも相手にも「完璧」を求めなくなったことですね。物事によっては完璧であろうとすればするほどうまく行かないことがありますし、そればかり意識して他のことが疎かになっては本末転倒ですからね。次に、自分らしくいることの大切さ。自分のための時間をしっかり設けて、自分で自分のご機嫌を取ってあげること。これが意外と仕事と子育ての両立を進める上でポイントのような気がしています。

できないことについてははっきりと「NO」が言えるようになり、周囲へのヘルプシーキングもうまくできるようになりました。家事や育児は決して一人ではこなせません。自分だけで抱え込まないことが重要なので、必要なときに素直に協力を仰げるようになったことは仕事の面でも大いに役立っています。

また相手のことを慮(おもんばか)ることができるようになりました。仕事であれプライベートであれ、私もふくめ、誰もがその人なりの様々な都合や事情を抱えているのを念頭に置くことで、物事の進め方に思いやりと余裕が生まれたように思います。どれにも共通して言えるのは、自分の意思や状況を知ってもらい、なおかつ相手の考えや事情にもしっかり耳を傾ける。そんなお互いを尊重しあえるコミュニケーションの大切さですね。

仕事と子育ての両立にあたって、
アシックスの制度は
どのように活用しましたか?

夫と家事や育児を分担するにあたって、フルフレックスタイム制と在宅勤務制度をフル活用しました。実は昨年子どもが2週間近く入院してしまったんですが、その際には積み立て有給と合わせて家族の看護や介護の名目で利用できる看護休暇も使わせていただき、不測の事態の中でしっかり子どもをサポートしてあげることができました。こうした制度のおかげで実家の手も借りず、夫婦二人で乗り切ることができ大きな自信になりました。

アシックスが行っている
女性活躍推進の取り組みの中で、
ご自身でも積極的に
関わっているものはありますか?

子どもを産む前からダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの有志グループに参加しており、いずれは結婚・出産などのライフイベントを迎える社員たちのフォローやサポートができればと考えていたんです。そうして私が復職した2年前に仲間たちと一緒に立ち上げたのが「アシックス・ペアレンツ・コミュニティ」です。

つい最近も子どもを抱える社員の経験談やメッセージを集めた「育休取得者紹介シート」を制作し、育休取得中の社員にシェアする活動などを行いました。ペアレンツ・コミュニティは今後も精力的に活動していくつもりです。

管理職という立場でもありますが、
マネジメントをする上で育児経験が
役立ったことはありますか?

私は管理職として育休と復職を経験して「子どもがいる管理職」になったことで、マネジメントの仕方や考え方に変化がありました。実際にチームマネジメントにおいては、夫との家事・育児の分担を通じて学んだチームワークの構築が生かされているように思います。また幼い子どもと接していると、相手の些細な表情の変化やしぐさに敏感になり、言葉で伝えられないことも汲み取ろうとするようになります。チームメンバーに対する観察力や相手をもっと理解してあげようという意識は、育児を経験したことでさらに強まったと言えるかもしれません。

もし部下に対して、仕事と子育てを
うまく両立するポイントを
アドバイスするなら?

私自身が上手に両立できているとはとても言えないのですが(笑)、こんな私でも何とかやれているということは伝えたいですね。 完璧を求めず、無理をしすぎず、自分ができる範囲の両立を心がけることが大事なのではないでしょうか。あと先ほども申し上げましたが、どんなに忙しくても自分だけの時間を作ってほしいですね。私の場合はスキマ時間にランニングをしたり、週末にフラワーアレンジメントを習ったりと、しっかり息抜きやリフレッシュすることを意識しています。アシックスの創業哲学に「健全な身体に健全な精神があれかし」という言葉がありますが、まさにこれが仕事と子育てを上手に両立するポイントなのかなと思います。

管理職であるワーキングマザーとして、
今後アシックスでどんなキャリアを
築いていきたいですか?

日本発のグローバルブランドとして、アシックスは今後ますます発展していくと思うんです。その中で自分の経験やスキルを最大限に生かしてブランドの成長に貢献したいですね。さらには年齢、性別、国籍などに関係なく社員全員が「アシックスは働きやすい」と感じてもらえる環境作りにも積極的に関わっていきたいです。そのためにはまず身近な人たちの幸せから。私たちのチームがこれまで以上に働きやすく、生き生きと輝ける場になるようにリードしていけたらいいですね。

*記載内容は取材当時のものです。